ストレスを和らげる 短時間ウォーキングの始め方と心への効果
忙しい毎日と心の疲れ
日々の生活の中で、ストレスを感じることは少なくありません。学業や仕事に追われ、自分のための時間を十分に取れないと感じることもあるでしょう。そんな時、心の疲れを感じたり、気分が落ち込んでしまったりすることもあるかもしれません。
運動が良いとは聞くけれど、まとまった時間を取るのは難しい、運動が苦手で何をすれば良いか分からない、始めても続かない、そう感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、心と体の健康のために、何も長時間の激しい運動が必要なわけではありません。ほんの短い時間でも、手軽にできる運動が、心の状態を整えることにつながる可能性があります。今回は、その中でも特に手軽で、ストレスの緩和に役立つとされる「短時間ウォーキング」についてご紹介します。
短時間ウォーキングが心に良い理由
なぜ、たかが数分、数十分のウォーキングが、心の健康に良い影響を与えるのでしょうか。これにはいくつかの科学的な理由が考えられています。
気分を安定させるセロトニン
ウォーキングのようなリズム運動は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの分泌を促進すると言われています。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、気分を安定させたり、安心感を与えたりする働きがあります。ストレスを感じやすいときや、気分が落ち込んでいるときに、セロトニンが増えることで、心の状態が穏やかになることが期待できます。
ストレスホルモンを減らす可能性
慢性的なストレスは、コルチゾールというストレスホルモンの分泌を増やし、心身に様々な影響を与えることがあります。適度な運動は、このコルチゾールのレベルを調整し、ストレス反応を軽減する可能性が示唆されています。短時間のウォーキングでも、継続することでこうした効果が期待できるかもしれません。
脳の活性化と気分転換
歩くという行為は、全身の血行を促進し、脳への血流を改善します。これにより、脳が活性化され、集中力や思考力が向上することがあります。また、外の景色を見たり、風を感じたりしながら歩くことは、単調な思考から離れ、気分を切り替える良い機会となります。
自律神経のバランス調整
ストレスは自律神経のバランスを崩しやすく、心拍数の増加や胃腸の不調など、体の様々な不調につながることがあります。ウォーキングのような一定のリズムで行う運動は、自律神経のうちリラックスに関わる副交感神経を優位にし、乱れがちな自律神経のバランスを整える助けとなる可能性があります。
このように、短時間でもウォーキングを行うことは、脳内の化学物質や自律神経に働きかけ、間接的あるいは直接的に心の状態を改善する効果が期待できます。
ストレス緩和のための短時間ウォーキングを始めるには
それでは、具体的にどのように短時間ウォーキングを日常に取り入れれば良いのでしょうか。運動習慣がない方でも無理なく始められる方法をいくつかご紹介します。
1. 小さな目標を設定する
最初から「毎日30分歩く」といった大きな目標を立てる必要はありません。まずは「1日5分だけ歩く」「通勤・通学の最寄り駅の一つ手前で降りて歩く」といった、達成しやすい小さな目標から始めてみましょう。目標が小さければ、始めるハードルが下がり、「できた」という成功体験を積み重ねやすくなります。
2. 「ながら」で時間を見つける
忙しい中でも時間を見つける工夫をしましょう。例えば、
- 休憩時間に会社の周りを少し歩く
- ランチタイムに外に出て歩きながら気分転換をする
- 帰宅途中にいつもより少し遠回りしてみる
- 用事のついでに歩く距離を増やす
このように、既存の行動に「ながら」でウォーキングを組み込むと、新たな時間を確保するよりも手軽に始められます。
3. 特別な準備は不要
ウォーキングを始めるのに、特別なウェアやシューズは必ずしも必要ありません。普段着ている服や、通勤・通学に使っている靴で大丈夫です。もちろん、動きやすい服装を選べばより快適ですが、「準備が面倒」という理由で行動が止まるくらいなら、そのままの格好で外に出てみましょう。まずは始めることが大切です。
4. 歩くペースよりも「続けること」を意識
速く歩くことや長い距離を歩くことよりも、まずは歩く習慣をつけることを優先しましょう。景色を見ながらゆっくり歩く、音楽やポッドキャストを聴きながら歩くなど、自分が心地よいと感じるペースで歩いて構いません。
5. 歩く場所を選んでみる
自宅や職場の近所、公園、川沿いなど、歩いて気持ちの良い場所を見つけるのも良いでしょう。自然が多い場所は、さらにリラックス効果を高める可能性があります。新しい道を通ってみるだけでも、新鮮な気分転換になります。
短時間ウォーキングを継続するためのヒント
始めた短時間ウォーキングを習慣として根付かせるためには、いくつかの工夫が役立ちます。
アプリや記録を活用する
スマートフォンの歩数計アプリなどを活用して、歩いた時間や距離を記録してみましょう。数字として成果が見えると、モチベーションの維持につながりやすくなります。目標達成度を確認するのも励みになります。
ルーチンに組み込む
特定の行動とウォーキングを結びつけることで、習慣化しやすくなります。例えば、「朝食後に5分歩く」「仕事(または授業)が終わったらまず10分歩く」のように、毎日のルーチンの中に組み込んでみましょう。
「完璧」を目指さない
毎日必ずやらなければならないと気負いすぎず、体調や天候によっては休んでも良いと自分に許可を与えましょう。できなかった日があっても気にせず、次の日にまた再開すれば大丈夫です。継続には、柔軟な考え方も大切です。
目的を明確にする
「ストレスを減らしたい」「気分転換したい」など、ウォーキングをする目的を意識しておくと、モチベーションを保ちやすくなります。歩いている最中に、その目的を思い出してみるのも良いでしょう。
友人や家族に話してみる
もし可能であれば、友人や家族に「ウォーキングを始めたんだ」と話してみるのも良いかもしれません。誰かに話すことで、自分自身の意識も高まりますし、応援してもらえることもあります。
まとめ
忙しさやストレスを感じやすい現代において、心と体の健康を保つことは非常に重要です。短時間ウォーキングは、特別な準備や長い時間を必要とせず、手軽に始められるメンタルケアの方法の一つです。セロトニンの分泌促進、ストレスホルモルの抑制、脳の活性化、自律神経の調整といった効果が期待できます。
まずは「1日5分」や「通勤・通学の一区間だけ」など、小さな目標から始めてみましょう。無理なく続けるための工夫を取り入れながら、自分のペースで続けていくことが大切です。
もし、運動習慣をつけることや、ご自身の心の状態について不安や悩みがある場合は、一人で抱え込まず、大学の相談室や会社の産業医、専門の医療機関などに相談することも検討されてください。
この短い時間が、あなたの心と体を少しでも軽くするための一歩となれば幸いです。